新鍼灸法講座|半身症候鍼灸研究会は技術向上を望む鍼灸師、医師、鍼灸学生の為に新鍼灸セミナー、講習を随時開催しています。

セミナー情報 お申し込み お問合せ・資料請求

新鍼灸法講座

  • 右半身症候

  • 左半身症候

  • 中心症候

長い歳月、なぜ鍼灸家は治らない鍼灸を、治していると思い込んでいるのか?
なぜ鍼灸か?それは現代医学が治せない病を治せる医学だからである。
治る医学としての新鍼灸へ

検証なき古典理論を排し、人体を視る理論と術技の伝授 

“人体は無限に未知である。未知の鍼灸理論を日々刻々発見しなければならない”

半身症候鍼灸研究会 2019年版

  • 右半身中心症候

  • 左半身中心症候

  • W半身症候

第1章 未来の鍼灸に向けて、既成の鍼灸効果の見直し。治らない鍼灸をいつまで続けるのか?

(以下、「臨床鍼灸学・新鍼灸法」はじめに、より抜粋)

国内鍼灸は現在、最大の危機に直面している。混迷する鍼灸界の病根は何か?鍼灸はどこへ行くのだろうか?もはや、治らない鍼灸の時代であってはならない!治す鍼灸を実践する鍼灸師、医師が日本医療を改革する時がきている。 鍼灸界の病根は鍼灸臨床が治っているのかどうか、検証されないまま行われていることに尽きる。この書の内容から、強烈な反感を抱くか、あるいは愕然とすると思う。本書は社会が真に求めている高度治療効果の鍼灸、そして現代社会が期待する名人鍼灸家のための治る鍼灸法を解説した。
今日までの鍼灸は東洋医学の神秘性の陰に有効性をひたすら唱えるだけで、なぜ鍼灸が治っていないのかを直視してこなかった。多くの疾患が治せない現代西洋医学を最も信用しているのは鍼灸界である。それが治る医学であったなら現状レベルの鍼灸が存在できないからであろう。
治療とは症状の意味を知り、生体が発している正常・異常サインを読み取り、後は生体の治癒力に任せることである。それには正常・異常の明白な診断法が不可欠である。つまり機能低下の有無のテスト法の存在である。

1.鍼灸と民間療法の相違は医療効果の違い

従来の医療と民間療法の境界が不明瞭な鍼灸では、鍼灸の科学化の研究も無駄になる。温灸とビワの葉灸、塩灸、しょうが灸。吸角、ヒル療法、梅花鍼…。鍼灸師が行えば医療で、一般者が行えば民間療法なのか。鍼は一般者では違法になるかも知れないが、小児鍼、集毛鍼なら違法かの判断は微妙である。
本書では、阿是穴刺鍼は医療でないかのような見方があるが、医療的効果がなければ脈診による鍼灸も医療ではなく、医療的効果あれば阿是穴刺鍼が医療になるという見方をする。
原初的医療は当然、症状、痛みの消失が目的であっただろうが、過信すると落とし穴がある。症状の消失があってもそれが同時に原因の改善からの生体機能の向上によるものでなければ医療効果とは言えず、鍼灸の科学化研究にも脊髄神経の感覚繊維の機能低下による鎮痛、運動繊維の機能低下による関節の弛緩からの指床間距離(FFD)テストの短縮を医療効果と混同している。医療的鍼灸と民間療法の違い、対症療法と原因療法の違いは何か?
臨床上端的に言えば神経機能の向上が前提となり、「医療効果とは筋力の向上であり、症状が消失しても筋力が低下していれば機能低下で医療ではない」と判断する。この観点から既成鍼灸臨床を見て行くと、これまであいまいであった鍼灸治療が本当に有効だったか否か、明瞭に明かされ、従来の鍼灸効果の疑問が見えてくる。治る鍼灸の世界がそこから確実に拓かれることになる。

2.鍼灸界と学会

国内鍼灸、中国中医学鍼灸にも共通しているのは、鍼灸治療効果の不透明性である。各国、学会において個々の膨大な鍼灸の有効性論文が発表はされても、一般社会が求める全疾患に対しての標準的鍼灸効果とその再現性については明確ではない。
スポーツにおける競技者の優劣は試合を見れば判断が着く。鍼灸界には試合が存在せず、口頭、文字で優劣を競い合っている。臨床現場を見せず、その結果として、臨床鍼灸自身、種々疾患が鍼灸でどこまで治るのかを社会に公表できない。どこまで治さなくてはならないか推定のまま、確信が持てない鍼灸臨床を行って来た。
鍼灸研究は書籍と、論文中心の研究発表で、臨床現場が存在していない。外科手術法についての論文、発表、論争をしても、手術台でメスを取らなくては手術ができない。鍼灸も薬学のように効果が決まった薬剤があるのではなく、手術のメス以上に鍼一本で体内、体外全身組織をいかに調整するかの手技的技量の世界である。
鍼灸の科学化、鍼灸のエビデンス研究分野でも、日常的各種疾患に対してさえ明確な有効性を示す医学的成果が上がっていないと言い、果ては鍼灸効果がプラセボか否かに低迷する研究は、研究者の労は認めても鍼灸界自ら鍼灸効果を貶めているのである。これら研究対象のように有効性の低い鍼灸の評価をなぜ、社会に求めるのだろう。そして科学化研究の対象が同種の鍼灸であるということにも思い至らない。質の同じ鍼灸をいくら多角的にとらえても、もし有効性がないものであるなら、その有効性の証明は困難である。
鍼灸業界が生き残りと業界の発展を目指すのなら、唯一、有効度の高い鍼灸を創造すること以外にない。種々問題がある科学化研究より、受療者からの実体験のみにより社会的評価が生まれるものである。有効度が高ければ、逆に需要が逼迫し鍼灸師不足になる。

3.鍼灸界に

閉鎖的秘密主義鍼灸から臨床公開鍼灸へ!鍼灸師は資格取得後も各疾患に対しての実際の効果を見聞する場がない。研究団体における講習での理論指導上のモデル臨床から想像するだけである。指導者は主宰する理論以外の鍼灸理論には保守的であり、他者の臨床見聞には極めて消極的である。学習者も個々の指導者、指導理論の権威に依存し、敢えて種々の臨床見聞までは興味を持とうとしない。

4.古典鍼灸理論の払拭

今日、各鍼灸派、あるいは局部的全身刺鍼においても経穴理論などなんらかの古典理論が活用されている。科学化の研究一辺倒の鍼灸界が、古典医学鍼灸理論についての検証は欠落している。
古典的蔵象理論があっても具体的臓器、器官、組織の診断がないものは、刺鍼後の身体部位、組織が改善されたか否か不明である。体内臓器の変化も不明の解剖学のない古典医学理論鍼灸は、各症状の変化を中心とした対症療法にならざるを得なく、膨大な問診理論が羅列され、具体性のない観念的鍼灸理論を満足させるための臨床とならざるを得ない。
経穴学説と特効穴とは何か?身体全体組織はすべて連繋されている。効果の違う数百の経穴があるのは疑問である。経絡的本治法と標治法があり、さらに特効穴がある。治病求本と言いまた標本兼治と言う。急性疾患は経絡を正常化する本治法では解消しないという。
経絡学説での重要な診断に橈骨動脈の脈差診があっても、脈による身体上の経絡循環状況を明示しない。新鍼灸法では12経脈の異常は脳脊髄液(CSF)の循環調整ですべて解消している。経絡現象は生体の異常時の現象であるから、筆者の臨床では12経脈の循環障害が1度の臨床で正常化して、経絡現象自体が生じなくなる。
もし、この膨大で複雑な古典鍼灸理論をすべて除外したら、その鍼灸は無効なのだろうか?少なくても古典理論が正しいのならば、無効でなくてはならない。古典理論を一切除外した一鍼灸法が、この本書で解説する新鍼灸法(半身症候鍼灸法)である。その効果は果たして無効なのだろうか?実際にはその効果は現代西洋医学が難病とする疾患、不治とされてきた疾患が日常的に改善、治癒させている。難病というべき疾患はごく稀である。
さらに解剖学的組織の診断不在と共に奇恒の腑として骨格、脊髄、脳の診断を排除した、古典鍼灸理論での人体はクラゲやナマコのような無脊椎動物のとらえ方になり、水中動物でない縦長体型の人間は直立バランスを取りながら営む、陸上生活ができない。
中医学では電気抵抗測定器での経絡診断まで活用するが、肝心な人体上での気血の経絡循環状態の感知法が存在しない。古典医学理論を鍼灸界は長年にわたり聖域としたまま全く検証しようとせず、鍼灸臨床を実践しているのである。

5.正常・異常の診断法

古典鍼灸理論には身体組織に対する正常か異常かの正確な判定法の存在がない。生体は常時、自身の機能低下組織を認識し、機能回復、あるいは治癒させている。組織に接触すると、異常組織には負荷となり忌避反応を生じ、正常組織は忌避反応を生じない。体外からのどのような微細刺激、微細物質、あるいは微生物に対しても、生体にとり正常か、異常かを判別している。
生体が認識している自身の組織を正確に表示する正常・異常テストが現代西洋医学、東洋医学においても見当たらないなか、唯一存在する異常個所の接触により生体が発する忌避反応が筋肉反射の低下を表示するテスト法がある。生体の忌避反応を筋力低下現象として解読しているのがカイロプラクティックドクター、ジョージ・グットハートらの開発したA・K(アプライド・キネシオロジー)の筋力をインジケーター筋として使用する筋肉反射テストである。その一部にA・Kの擬似テスト法として一時、鍼灸界で知られたO -リングテストがある。
生体の忌避反応をそのまま正常・異常の判定法としたこのA・Kを完璧に活用しているのがこの新鍼灸法であり、筆者が先に創案した手技療法「律動法」である。画期的診断理論の下に現代西洋医学で不可能な多く疾患の原因が次々解明され、改善、治癒させる医療の常識を覆す治療効果を上げている。

6.「鍼は治る、鍼灸臨床家が治らなくした」

これが筆者の持論である真の鍼は、現代西洋医学のようにすべて原因不明で、治らない医療ではない。現代西洋医学が治らない多くの疾患を治すための医療である。
近年、病人を治すことに情熱を持つ鍼灸師がいなくなった。効果の説明ができない美容鍼まで国内鍼灸、中医学鍼灸まで受け入れられ、中国中医学では、腰痛に神経ブロックまで併用する。国内17万人の鍼灸師資格者の内、病者を治すことに情熱を抱く鍼灸師は100人もいるだろうか?鍼灸が職業選択の対象としてしか関心がなくなった。
1972年の米中共同声明、日中国交回復時の鍼灸ブームがあり、中医学鍼灸が盛り上がった。さらにその10数年前には国内鍼灸界を揺るがす経絡論争があった。経絡肯定の古典派と否定派の科学派の論争が「医道の日本」誌上で交わされたが、肯定の古典派が決着を避けた感があり終結を見た。この肝心な決着を避けてしまったことは日本鍼灸発展の貴重な機会を逃したと思うのである。
身体が視えない理論から、身体が視える理論。人体を古典理論で解釈するのではなく、自身の理論で診断する、透視診断の必要性が無視できない鍼灸の時代になった。手術、採血からの細菌・ウイルスの感染による重大な医原性疾患が全身に次々に拡大している。解剖学診断のない鍼灸医学が、喘息、副鼻腔炎、頭痛、難聴、緑内障、網膜変性、腎炎、子宮筋腫、卵巣腫瘍、脳腫瘍、脳脊髄液減少症を完治させているだろうか?
古代中国に神医とされた扁鵲が存在した。今日の脈診流派の源流ともされ難経の作者ともされる。塀の外から邸内の病者を透視診断した。体内透視するその扁鵲が鍼灸古典理論、脈診をなぜ必要としたのか?脳循環、全身の血液循環から橈骨動脈の脈状まで透視できる。さらに筆者は、すべての古代名医は体内の透視診断ができたはずであると推測している。
筆者が平成7年以来、指導しているセミナーにおいて、近年、腎臓、肺、子宮、卵巣、肝臓、大脳の炎症と、萎縮・膨張、捻れから、X線で読影不能の四肢骨の微細骨折まで5メートルの距離から透視診断する学習者が30人を下らない。脳脊髄液(CSF)の上行、下行の循環障害、さらにその原因となる小脳テントの収縮、拡張障害まで透視している。

7.新鍼灸法(半身症候鍼灸法)

新鍼灸法は体内全体を流動する新しい気の理論を発見している。それは血液、リンパ系循環、脳脊髄液循環等である。全身器官、組織の異常に由来するすべての疾患と、全身の皮膚、体内すべての異常を診断し、脳、脊髄、内臓、血液循環に至るまで身体組織の機能を支配した体液系の流動現象である。この「気」の流動領域3区分の正常化がなければ全身組織を正常にできない。身体を縦断する3領域、中心と左右の気の流動を正常にする。その部位は上下を通る脊髄左右灰白質、白質の神経分布と、左右側脳室、第3脳室とも関連した領域を病位側とした、右半身症候、左半身症候、中心症候という。その各刺鍼点は後頭骨上項線上で右半身症候は右上項線上、左半身症候は左上項線上、中心症候は外後頭隆起周辺で、いずれもその頭蓋内面では左右の横静脈洞と静脈洞交会に小脳テント下縁が付着している。小脳テントの前方は大脳鎌となり、上下で矢状静脈洞に繋がる。横静脈洞の先は頸静脈孔で3種の脳神経を通している。この後頭骨硬膜は脊髄硬膜と連結して上部仙骨硬膜に付着して、脳髄膜系、脊髄硬膜系と脳脊髄液(CSF)循環に深く関与している。
体内透視診断の修得による体内全組織の感覚線のスキャンから、その組織の正常・異常を判定する筋肉反射テスト(TRテスト)の併用により体内全組織を診断することができる。全身組織の異常部位がすべて正常にできる存在として人体を3分割に縦断する気の流動域病位を診断するのが半身症候側診断である。筆者の臨床では、あらゆる身体的疾患、あらゆる精神的疾患患者が来院する。それはいずれも精神疾患に至るまで医学理論では未知の的確な診断法が存在するからである。参考までに筆者の患者数を挙げると、鍼臨床での一日の患者数の最高は、110人を超えている。

8.新医学としての新鍼灸法

現代西洋医学を超える鍼灸のポイントを挙げてみたい。
①.古典理論が排除した奇恒の腑(脳、髄、骨、脈、女子胞)と解剖診断を主軸とする診断。
②.刺鍼時に全身組織、疾患状態の改善を知覚しながら行う刺鍼。確証のない刺鍼をしない。
③.新鍼灸法は透視診断修得システムにより体表、身体内のすべての組織を1/10ミリ以下までスキャンすることができ、筋肉反射テスト(TRテスト)によりその正常・異常を判定することができる。
④.鍼灸界の秘密主義を排除する。学会発表も臨床公開のない論述のみの発表では何も臨床の進歩にはならない。腰痛に刺鍼と神経ブロック併用発表まで掲載しているが、これでは鍼灸学会にならない。

9. 鍼灸師、鍼灸学生は各疾患に対する効果を見聞する、

鍼灸師は鍼灸学校入学以来、各疾患に対する効果を見聞する場がない。本書の内容は、新鍼灸法の理論と修得法の解説である。各脊椎調整法が治療家の手技的感性を重要視した手指、身体感覚の訓練法の指導があるのに対して、古典鍼灸理論では脈診、切経の複雑理論を説いても、それを理解する術者の感性については触れない。身体感覚訓練法なき鍼灸は触診能力無用の理論になる。いかに古典医学理論の呪縛が強いかを知るのである。
臨床見学を拒む鍼灸指導者はすべて本物の実力者ではなく、治療家の臨床見聞に関心を持てない秘密主義の学習者からは、治療に対する情熱を疑うのである。
本書をヒントに、驚異的医療効果を上げ医療界をリードする鍼灸の可能性に気づき、社会が要請する鍼灸師資格の真の意味を知り、そして現代の扁鵲たらんとする名人鍼灸家の出現、ナンバー1たらんとする情熱ある鍼灸家が読者から次々に出現し、全国の病者から喜びの声が溢れる日を望んでいる。執筆中に年号が変わった。治さない鍼灸を捨て、現代西洋医学を超える令和時代の鍼灸を共に創造したいと願うのである。
茂木 昭

(以上、「臨床鍼灸学・新鍼灸法」はじめに、より抜粋)

2章 鍼灸師、鍼灸学生の皆さん、既存の鍼灸法が治しているのかどうか? 検証したことがありますか?

鍼灸師の誰もが、ただ一途に治そうとする臨床を行っていると言う。では、治っているのかどうか検証したことがあるだろうか?喘息で、肺、気管支、肺胞の診断。緑内障での網膜、硝子体の診断。突発性難聴での中耳、内耳、側頭葉の診断。腎臓病での皮質、髄質、腎盂、腎杯の診断。硬膜下出血での出血部位の硬膜の診断。診断と改善のチェックができない鍼灸が治しているという思い込みである。
実際は鍼灸師の誰も、日常の臨床が治っているかどうか確認していないのである。学会は鍼灸は進歩発展していると公言している。医学的に鍼灸が評価されているというが、その西洋医学医療が国民から久しく評価されていないのである。多くの疾患が原因不明で治らないにもかかわらず、大勢の鍼灸師がいても開業が困難なほど評価されていないのである。
既存の鍼灸法には正常・異常の的確な判定法、診断法がなく、解剖学的診断法がない。内臓の診断、筋肉、骨格、脳、神経系の診断法がないのにどうして治っていると言えるのだろうか?
鍼灸が治っていなことを理解できない以上、低迷する、あるいは衰退する鍼灸を抜け出ることはできない。鍼灸師、鍼灸学生の皆さん、鍼灸を検証することである。ただ流されていては鍼灸に先がない。

3章 治す鍼灸の原則

1.術者の気の問題が治療効果を左右する

鍼灸に限らないことであるが治療において理論より重要なものがある。理論知識において遜色のない治療家が、臨床では全く結果を出せず、理論派とは言えない治療家が高い評判を得て名が知れ渡っているケースが多いのであるが、理論にも治る理論と治らない理論がある。鍼灸臨床家は治らない理論と治らない治療を見抜く能力が不可欠である。
生体には寿命という永年生存できる能力があるから、日常の多くの障害、体調不良は休養を取るだけで回復するようにできているということを理論偏重の治療家は忘れ、人為的治療理論を完璧に実施さえすれば治るはずだと錯覚している。診断とはその生体の治癒力を知ることであり、生体にとり最高の回復力を発揮させるものは最小の刺激である。
さらに厳しい問題が治療以前において存在する。最初から、治せる治療家、治せない治療家の違いが厳として存在する。それは治療家自身の気の問題である。邪気の有無のことである。
以下のテストで如実にその違いを知ることができる。邪気を持つ治療家が患者に触れると生体機能がすべて低下する。その生体機能全体の代表として筋力テストを通して知ることができる。

〈術者の気のテスト法〉
①患者をベッドに伏臥にする
患者のハムストリング筋テストをする。患者は45度くらい膝を屈曲して力まない軽い状態で止めておく。
②被験術者に患者の身体の一部を接触させる
検査者がハムストリング筋の筋力を検査する。このときハムストリング筋筋力が、
A.低下しない(一定の抵抗ができる)…正しい治療ができる(邪気がない)
B.低下する(全く脱力する)…  邪気治療になり、患者は悪化する。

この例では便宜上ハムストリング筋を使用したが、全身の筋力低下が生じていて他のすべての 筋力をテストしても筋力は低下している。
低下するときの術者は、手技治療をしても、刺鍼をしても患者の生体機能は悪化する。
いくら治療理論の熟知に努めても、効果が出ないと悩むか、この程度で良しと諦めているのが鍼灸界の一般である。
そして、低下しないときの術者ならば治そうという焦りを持たない臨床をして行けば必ず一定の 効果が上がり、経験の蓄積で次第に治る治療を修得できるようになる。邪気の原因は、自身の心の 不安定さである。日常生活中の精神的緊張と不安心理状態が、さらに治療に対する不安とあせりを生む。精神的不安定な術者の治療は、指圧でも鍼灸でもすべて患者は悪化する。日常の精神的安定を保持できるようになることを目指さない治療家には臨床は向かないことになり、治療家自身も臨床により健康を害することにもなるだろう。
患者の筋力が低下するときの術者の治療を邪気治療という。
低下しないときの治療を正気治療、その気を澄(ちょう)気(き)と呼んでいる。
診断自体が自身の邪気が影響して、正しい診断もできない。一時よくなったように見えても回復せず、治療する度に悪化する。鍼灸界全体の治療効果が低いのは大部分の鍼灸家がこの状態であるからである。
この見解に対して実際に治っている患者が大勢いるという反論が出るはずだ。本当にそれが治っていたのかどうか?邪気治療の特徴は感覚神経機能低下して痛みがぼやけるということにある。痛み症状が軽減しても感覚神経鈍麻から同時に運動神経、自律神経の機能低下により筋力が低下、内臓の血液循環も低下する。直ぐにその痛みも戻り、その繰り返しで完治して来ない。
邪気のある治療家…①日常での呼吸が浅く短い②せかせかした動きで身のこなしがぎくしゃくしている。不動の姿勢を持続できな。体全身にこわばりがある。これは脊椎が弛緩している状態から、全身の筋力に強張りが起きている。望診で言えば姿勢全体が上ずってぎくしゃくしている。手指筋肉が強張っている。TRテストをしてもその自身の全身筋力が低下して患者に負荷をかけない状態からTRテストに異常状態が生じている。正確なTRテストが困難になる。

2.治す鍼灸家の邪気のない体作り

臨床時における呼吸が患者より短いようでは、患者の体を診断して、治すことはできない。
①日常、静かな長い呼吸ができる体質を造る(患者は呼吸が短くなっている。患者より呼吸が長くなっていないと患者を治せない)。
②身体の動作、身のこなしを円滑にする。
これは脊椎がしなやかに真っ直ぐに伸び、脊椎をはじめ全身関節が締った状態になることを目指す。TRテストが明瞭にできるようになることで逆に全身の整った姿を知ることができる。ギクシャクしない能楽師のすり足の身のこなしを真似る。重心移動がぶれず、歩行時に呼吸が乱れないすり足の歩行訓練をする。治療家の治療時の身のこなしが流れるような重心移動にならないと、全身の動作に力みが起きる。この力みがあるうちは臨床家としての感性が機能しない。全身感覚が鈍り、優れた治療家から見ると手指感覚も厚いグローブをはめたように見え、望診感覚が鈍る。この身体バランス調整から望診能力が飛躍的に伸び、やがて透視診断能力が芽生えてくるのである。
刺鍼時の術者の姿勢に歪みがあれば、浅い呼吸になって、術者の邪気(心身機能が乱れたエネルギー)が鍼体を通して患者の体内に入る。この邪気現象をA・Kではスイッチィング(神経エネルギーの錯乱状態)として重視して、診断前にその調整法、身体較正(チューニング)をする。その方法は自身の手で、片手を兪府と片方の手を神闕に置きマニピュレーションをするのである。 鍼体に術者の気が影響しないような術者の体のバランス調整法を修得しなければ常時安定した治療成果は上げられない。

3.気を受けやすい治療家は治せない

よく鍼灸師が口にする「私は患者の邪気を受けやすい」と自身の感覚の鋭敏さを誇る言い方がある。患者の問題ではなく、治療家自身の心身が邪気の状態にあるということであり、その気が患者から反射して返ってくるのである。この治療における治療家の邪気の問題は理論偏重の傾向がある鍼灸師に特に多い。TRテストが困難になる。

4章 治す鍼灸は正確な筋肉反射テストを活用する

治す治療とは何か?
正常・異常の正しいテスト法を所有して、異常を治す。それだけである。正確な異常箇所の診断が治療効果の90%を握っている。何故なら、生体は常時治そうと治癒力が活動している。正しい原因を知るとそれだけで、生体治癒力が活発になるのである。
最高度の治療法とは、あらゆる全身組織、器官を網羅した診断法が不可欠で、それには唯一正しい筋肉反射テストだけである。全身の異常部位を診断したら、治す原因も筋肉反射テストで知ることができる。そして治ったかどうか、改善されたかどうかを筋肉反射テストで確認することができる。

代表的筋肉反射テスト…母指・小指対立筋テスト、TRテスト

1.母指・小指対立筋テスト

視覚的に最も筋肉反射テストを理解しやすいテストとして、母指・小指対立筋テストを挙げる。
患者の母指小指対立筋で作った輪をごく軽く開くのである。
このとき患者の身体に異常が生じているとき、あるいは異常部位に触れたとき患者の指の輪が開かれる。異常がなければ閉じたまま、開かれない。

O‐リングテストは疑似筋肉反射テストであり、正しい診断は困難である。

2.TRテスト

患者の手を使う法:患者の手の母指・示指骨間筋を術者の一方の母指と四指の軽く挟み骨間筋の弾力を調べる。次に患者の診断部位にセンサーを当て(手指でもよい)、骨間筋のわずかな低下があるか否か判断する。弛緩して母指が沈む時は異常、変化せず沈まないときは正常である。
術者の手を使う方法:患者の手の母指・示指骨間筋を術者自身一方の手に替えて、同様に行う。

5章 万人に活用できるTRテストの特徴

1.TRテストの方法

母指・小指対立筋テストと三角筋テストは、視覚的にも感覚的にも明瞭に判定できる検査法であるが、難易度が高く、その習得は年数がかかる。A・K(アプライドキネシオロジー)の長い歴史がありながらも普及しなかったことから難易度が分かる。そのために少しの訓練による誰でも習得できるテスト法として筆者が開発したのが、TRテストである。微細な母指・示指骨間筋により微細な反応を見ることで、全身組織、いかなる微細組織についてもセンサー(手指でも可)を触れることにより判定できる。
検査ポイントは、母指と示指の間で合谷に当たるあたりで、最も筋肉が柔らかく膨らみのある部位である。自己の手を使う場合で説明する。右利きの例で説明する。左手の掌を緩めに開き、右手の四指をやや曲げて、左の骨間筋の下に沿える。次に左手の骨間筋の上に右手の母指を乗せて軽く沈める。ポイントはこの母指をいかに微細に軽く沈めるかである。母指の重さにより沈んで行くようにイメージすると容易に習得することができる。
①このテストの形から、平常時の弾力を見ておく。これをロックを見るという。
②右手の手指をセンサーとして、診断部位に触れる。接触部位は直接皮膚上でも、薄い着衣上でもよい。
③再び、①に戻り骨間筋の反応を見る。変化しなければ正常である。変化してロックが壊れ、母指がすっと沈むときが異常である。
TRテストのメリットは検者自身の手で常時一定の筋肉で調べることができるところである。自己筋力を使う場合の患者の身体に触れた後20秒は検者の体に患者のエネルギーが残るので、診断部位から手を離してもその間に自身の骨間筋で検査すればよいのである。

2.TRテストの訓練法、サンプルを原器として使う

有害性のサンプルは、鉛、磁石(ホワイトボール掲示用の磁石でもよい)。
①最初に骨間筋のロックを見ておく
②他方の手指でサンプルに触れとTRテストが沈む、離すと元にロックが効く、この状態が常時明示されるように訓練する。
このTRテストの習得により、全身組織を診断することができて、すべての治療理論の正当性をも検証することができる。多くの矛盾と、効果の疑問を検証することもできる。

6章 「これからの鍼灸理論の基本は透視診断」扁鵲治療を目指す

古典医学鍼灸理論の全部、あるいは一部が現代鍼灸にかかわっているのだが、解剖学不在の鍼灸は、現実の生体のための診断学ではなく、古典医学理論のための鍼灸臨床になっている。人体の表面を視覚的診断するだけで、体内の内臓、骨格、脳、脊髄については知ることができない。古典理論の骨格となる経絡現象も術者の眼で知るのではなく、理論に従って納得しているのである。
古代中国の神医、扁鵲は塀の外から、邸内の病人を診断した。まさしく新鍼灸法で指導、実践しているのは、この透視診断を基準とした人体診断である。
もう解剖学のない古典医学鍼灸はすべて払拭して、治ることに純粋な鍼灸を実践することである。患者が診察ベッドに座った状態での望診で体内臓器、骨格、脳脊髄を理解して、全身に発散する健康状態からの気の判断ができるように目指さないと、逆に治療以後の健康状態のエネルギーをチェックすることもできずに、解剖学的診断ができなくても、古典理論診断ができれば治るとする。しかし、新鍼灸法の観点は異なる。診断できないものは治せないとする。医学的診断ができない医療は医学的効果も知りようがないので医療とは言い難い。
例えば、喘息、肺炎での炎症部位、右の上葉,中葉、下葉、左の上葉、下葉、気管支、主気管支、葉気管支、肺胞、いずれも診断ができない。脳腫瘍、脳梗塞、子宮のポリーブ、卵巣嚢腫、眼球の白内障、緑内障の水晶体、網膜部位、聴覚障害での内耳、中耳、側頭葉の炎症部位、古典医学理論では、障害部位を特定できないし、当然その組織の正常・異常の診断がない。古典医学理論が医学でないことになぜ気がつかないのだろう。病人を治すことに全く関心がなくなっている鍼灸家、鍼灸師が長年鍼灸に携っていると言えるのである。「鍼灸は治る、鍼灸師が治らなくした」。

7章 新鍼灸法理論

1.血液、リンパ系の循環系の流動を中心とした「新しい気」理論

鍼灸理論各派の治療理論
現代医学理論鍼灸派(科学派)は現代西洋医学の治療理論を踏襲する。つまり、解剖学的組織の診断に基づき現代西洋医学での薬物治療により全身を回復させるのに対して、身体組織別に効果がある選穴法を行う。古典派は陰陽五行説と経絡理論に基づき気血の循環を改善する。古典理論の数多い問題のうちの最大の問題点は、経絡理論であろう。人体が血液が循環し、酸素を吸入して生命を維持しているように、古典理論における、血液と酸素の摂取が経絡による気血津液の循環であるが、その経絡の循環状態を、体内、体表上で明示することができないのである。決め手は身体の一部での橈骨動脈の脈診である。しかもその脈状では脳、内臓、全身の血液循環状態を診断できないという。
新鍼灸法理論
身体組織を解剖学的に診断しその因果関係を知り、全組織を正常にする存在として発見した「新しい気理論」を正常にする刺鍼法を行う。生体に有害な薬物による対症療法を行う現代西洋医学に対して、生体機能に無害なわずかな刺鍼刺激を与えるだけの刺鍼であるから、確実に現代西洋医学が治せない多くの疾患を治すことができる。
「新しい気」理論とは
霊枢で12経脈が古代中国の中原での主要な12河川に関連づけているが、新鍼灸法で体内を流動する気とは、血液循環、リンパ系の流れ、脳脊髄液(CSF)循環を中心とした存在としている。

2. 3領域の気の流動領域の病位

①.中心症候
身体の正中線から左右に各2~3センチ内の領域の気の流動障害
②.右半身症候
身体の正中線より2~3センチから右半身全体の領域の気の流動障害
③.左半身症候
身体の正中線より2~3センチから左半身全体の領域の気の流動障害
④.W半身症候
身体の正中線から左右に2~3センチを除いた左右の領域の気の流動障害
⑤.右半身中心症候
右半身症候と中心症候の複合
⑥.左半身中心症候
左半身と中心症候の複合
以上の6種の病位のいずれかが存在する。

3.各病位の解剖学的異常

中心症候:脊髄白質の機能低下、第3脳室の機能低下
右半身症候:右側脊髄灰白質の機能低下、右側脳室の機能低下
左半身症候:左側脊髄灰白質の機能低下、左側脳室の機能低下
W半身症候:右半身症候と左半身症候の機能低下部位の組み合わせ
右半身中心症候:右半身と中心症候の機能低下部位の組み合わせ
左半身中心症候:左半身と中心症候の機能低下部位の組み合わせ

4.刺鍼点

①中心症候:外後頭隆起周囲の反応点。②右半身症候:後頭骨右上項線上の反応点。
③左半身症候:後頭骨左上項線上の反応点。
複合症候は各組合せである。
いずれもその頭蓋の内面では左右の横静脈洞と静脈洞交会に小脳テント下縁が付着している。さらにこの後頭骨硬膜は全頭蓋の内面とともに脊髄硬膜に連結して上部仙骨硬膜に付着する。
このように新鍼灸法の治効理論の基本は動脈・静脈、脳脊髄液、脊髄硬膜系、脊髄硬膜系と脳脊髄液(CSF)循環に深く関与している。全身の内臓系、筋肉系、神経系とともに、それよりさらに体内内臓、筋肉系を包む膜系を重視した治療理論であるが、このことからも、新鍼灸法における「新しい気」理論では脳脊髄液循環がかかわっていることが分かると思う。この「新しい気」理論により生体組織のすべてを回復させることができるのである。

8章 新鍼灸法の治療手順

  • ①.診断準備・望診
  • ②. 頚椎症候テスト
  • ③.半身症候側診断
    A. 両手手指を上方から擦過するTRテストによる診断B.手指による気の感知による診断。AとBが一致しなければ診断をやり直す。
  • ④. 刺鍼点診断。半身症候から後頭骨3点(1~2点)。頚椎可動性チェック
  • ⑤. TRテスト(筋肉反射テスト)による全身代表診断点
  • ⑥.TRテストによる異常部位、症状部位診断
  • ⑦.統合点診断(メジャー)。後頭骨の変位(後上方・後下方)又は仙骨変位(後上方・後下方)
  • ⑧.関節可動性テスト(モーション・パルペーション)。頚椎、胸椎、腰椎
  • ⑨.伏臥で半身症候側の触診
  • ⑩.ナクラステスト
  • ⑪.ハムストリング筋テスト
  • ⑫.半身症候から後頭部3点(1~2点)への刺鍼。外後頭隆起周辺、左右上項線。
  • ⑬.再チェック。伏臥でのチェック。⑨、⑩、⑪.ナクラステスト、ハムストリング筋。
  • ⑭.再チェック。座位上のすべてのチェック。①望診、②、③、⑤、⑥、⑦、⑧の全診断のチェック
  • ⑮.立位による下肢の挙上と足踏み(全身の望診のための)
  • ⑯.全身にわたる望診

最後の望診が最も需要である。治療中は誤診があってもその誤診による治療で生体が機能が混乱を起こし、ぼやける。治療後の数秒の間により正治か誤診を判断できるのでこの数秒の間を大事にすることで、誤診を検出することができる。治療前と全く異なる健康体に変化して、患者が違いに驚くような状態が必要である。背すじがすっと伸び目線が高くなる。血色、肌つやが向上し、目が鮮明になる。全身からの温感が感じられる。表情が明るく治療前とは別人のようにならなければならない。このような変化が起きていなければ誤診の可能性が高い。

9章.TRテストによる異常部位、症状部位診断(基本的疾患部位診断)

3診以降は、必要がなければ代表診断点の代わりにその都度、重要診断部位を診断対象とする。第6章に挙げた各症状部位診断の項を参考に、全身の必要部位のTRテストを行う。

各患者の体質的重要部位診断
心臓疾患に対する両心房、両心室。その関連部位、肺、腎臓、脳血管、中部胸椎。呼吸器疾患に対する心臓、腎臓、上部胸椎。精神疾患による脳診断、頭蓋骨診断等。
各種症状、各種疾患に対応する部位診断
①.鼻疾患:鼻炎に対して、各副鼻腔の診断、嗅覚障害、鼻中隔彎曲
②.眼科疾患:白内障、緑内障、網膜変性、飛蚊症、網膜剥離、円錐角膜、翼状片、流涙、弱視、斜視。
③.耳鼻科疾患:難聴、外耳、中耳、内耳の炎症(側頭骨、側頭葉、大脳基底核の診断)。
④.脳循環、脊髄系:眩暈、ジストニア、脳梗塞、脳出血の後遺症、脳腫瘍、脳脊髄液減少症(硬膜損傷部位の特定、脳呼吸障害、脳髄膜障害、脊髄硬膜、小脳テントの変調の診断が重要)。
⑤.呼吸器疾患:左右の上葉、中葉、下葉。気管、気管支(主気管支、葉気管支)、胸膜、肺胞の診断。気胸の肺漏出部と、胸膜貯留部の特定。呼吸器疾患はすべて感染症が顕著であるので、感染症の同定診断が必要。
⑥.肝臓疾患:左葉、右葉、肝門部の診断。温感と柔軟度。
⑦.泌尿器疾患:腎臓、膀胱、前立腺の左右の患側診断。腎臓の皮質、髄質、腎盂、腎杯の診断。腎臓はT12~L2の椎間板変位診断が決め手になる。膀胱は、仙骨神経のS1.2.3の仙骨椎間板の診断がポイント。
⑧.婦人科疾患:子宮、卵巣、卵管の左右病側診断から、神経レベルから、S1.2.3の椎間板変位がポイント。神経支配が陰部神経であるから、仙骨内の仙髄の診断が婦人科疾患の決め手である。(特に婦人科疾患は、現代医療により多くの無用な摘出手術が行われている。女性の一生の健康を左右する摘出手術を避けるように鍼灸が実施されるべきである。)男性不妊症に対する精巣、精管、精嚢の診断とその原因も仙髄である。
⑨.胃腸疾患:小腸、大腸、胃、食道の各疾患を分けず、全体が関連しているので消化器の全体的診断と各個別組織の療法からの診断が重要。逆流性食道炎は必ず横隔膜裂孔ヘルニアが関係している。それは感染症と胸郭の中部肋骨の変位であり、中部脊椎変位がポイントである。消化器全体に共通することは感染症の問題である。現代医療はクローン病から、過敏性腸症候群まで不治とされ切除以外に対処できない。治る鍼灸が待たれるところである。胃、小腸、大腸はいずれも交感神経レベルに対応する腰椎、腰椎の変位、椎間板変位の診断が決め手である。胃経、大腸経の経穴に頼らず、効果を検証するべきである。胃腸疾患については常在性感染症の診断が必要である。
⑩.各種運動器疾患
a. 上肢疾患:下部頚椎の診断が不可欠であるが、手指関節の硬直は時に脳血管障害が隠されていることがある。腱鞘炎、手根管症候群等整形外科で、効果が上がらないことに鍼灸も便乗したりせず、治す医療を遂行するべきである。腱鞘炎が短期に完治するものである。
肩関節障害は、疼痛部位の局所鍼で満足しないで、積極的に治す鍼をする。まず、関節から、鎖骨、肩甲骨、近位上腕骨の微細骨折の診断ができなければ、ただ長引くだけである。本来一瞬にして改善する。
b.下肢疾患:上肢以上に微細骨折が決め手である。人体構築上最も負担のかかる部位であるから大腿骨、下肢骨の診断ができない鍼灸は多くの疾患を治せない鍼灸となる。筋肉系の疼痛、神経痛、そのもとは骨折である。過去の骨折部位の炎症はX線上での骨折の癒合であり、実際の微細レベルでの骨折は治っていない。成人患者の学童期の骨折は、骨折の痕跡が必ず存在し、その影響は他の関節にも影響を与えているので正確な診断の下に完治させる鍼灸をする必要がある。
c..四肢神経系疾患:構造的には四肢骨の微細骨折の診断が重要である。日常非常に多い整形外科、鍼灸で長引く四肢の神経痛はリュウマチとされることが多いが、ほとんどは感染症が主因となっている。発症時前の採血の有無、歯科診療の有無の確認がポイントである。注射か歯科診療での感染がいかに多いか知ることが多くの疾患に好成績を上げるポイントになる。原因が分からず、原因に関係なく症状の除去のみに専念する不確実な鍼灸は切り替える必要がある。まして古典理論に拘泥する鍼灸では種々疾患に対応できない。
d.脊椎系疾患(頸部、肩、背中、腰部)、慢性的頸部のこり、頸部の疼痛は頚椎の変位のみでなく、頚椎骨折、頚椎圧迫骨折を診断する。胸椎、頚椎部位の障害は、過去の打撲、事故を問診する。圧迫骨折はスポーツでは、スキー、サッカーでの打撲が多い。下肢のしびれ、歩行障害は脊髄腫瘍を検査する。硬膜腫瘍ではX線、MRI画像で読影できないことも少なくなく、感染症が絡んでいることが多いのである。長引く腰痛では、辷り症、脊椎分離、圧迫骨折が多く、これらのいずれも程度の違いがあっても必ず、椎間板変位が存在する。椎間板変位は呼吸器から、泌尿器、婦人科疾患に至るまですべての内臓疾患にも原因となっている。整形外科的椎間板ヘルニアは腰痛、頸肩症候群を起こすが、それより軽度のヘルニアを分けて椎間板変位と表現した。仙椎を含め、29個の脊椎のうち椎間板が存在するのは27個である。頚椎、胸椎、腰椎の24個は主に左右の回転運動が大きく隣接する個々の脊椎が拮抗作用で互いに反対の回転をする。従い、椎間板も左右に必ず回転する。その過剰回旋を椎間板変位という。
⑪精神疾患:
a.各精神疾患:うつ病、両極性障害、統合失調症、幻覚、幻聴、種々不安神経症等すべての精神的、心理的症状に対して脳内組織の障害として、大脳、小脳、脳循環、脳脊髄液循環を検査してその原因を追求する。
パニック症については呼吸障害がポイントにあることを知る必要がある。両肺の呼吸量が極端に浅くなるっているので、満員電車、満員のバスなど酸素の不足する空間において不安感が生じる。呼吸に注意することは、肺、気管支の炎症について正常でも、呼吸困難が起きる。つまり、肺、気管支の横隔膜呼吸は第二次呼吸、第一次呼吸は脳呼吸である。脳は頭蓋骨と共に、収縮、拡張、あるいは屈曲、伸展の呼吸運動をしている。これらの脳呼吸に障害が生じると、肺、気管支でいくら呼吸しようとしても肺、気管支は動かない。精神的疲労が強い時を想い出せば分かるようにそのときには脳循環が低下して固まったように動かない感じを想い出すだろう。
このように肺、気管支の障害でも、呼吸障害が生じるし、脳の異常でも呼吸障害が起きる。酸素が不足するから、不安になる。不安心理が主因でパニック症が起きるのとは少し違うのである。呼吸ができなくなる状況を体が予知して不安になるのである。
b.精神疾患の診断法
種々な精神症状に対した、それぞれの不安、状況をイメージさせることで、必ず精神上、身体上の負荷となりTRテストの異常が表示される。そのTRテストの異常が、原因になるところ、例えば頭部上から、センサーを当てて、右脳か左脳を診る。左右どちらかに反応したら、その片方の更に前方、中部、後部を調べていく。このようにしてTRテスト異常が消えた部位が確実の関係していることが分かる(センサーについてはストーンを使用すると、浅部、中部、深部と部位を探ることができるが、手指を使用する場合は、手指先を頭部内に垂直に立てて当てる)。精神疾患の症状に関する原因部位の多くは、頭頂葉の深部で、大脳髄質、大脳基底核、辺縁系あたりである。あるいは幼少時の頭部の打撲から一部の脳内の血行障害から、萎縮あるいは膨張している部位が原因となることがある。反応点が改善すると、精神症状が直ぐに何らかの変化が起きる。同じストレスとなったイメージをしてもTRテストの異常がなくなり、表情が明るくなる。急に笑みがこぼれることもある。強い精神症状は確実に比例した脳内の異常状況を知ることができる。脳内の細部の機能低下、循環低下部位を知ると、精神症状ばかりでなく、心配性、非社交性等の性格的問題と関係する脳機能の低下部位を特定することができる。
このように脳内組織の機能診断が可能になれば、多くの精神症状、精神疾患の治療が可能になるのである。
⑫皮膚科疾患
アトピー皮膚炎をはじめ掌蹠膿疱症等皮膚疾患は皮膚科でも原因治療はされていない、対症療法としての種々治療法を行っている。湿疹に対して湿熱症、虚血症などの分類があるが、新鍼灸法では、内臓の肺・気管支と小腸機能の低下との関連性を発見している。特に小腸の関連が強く、小腸の改善で一瞬にアトピーの皮膚炎症が変化することを患者自身の自覚から実証している。もう一つはすべての皮膚疾患に言えることで、感染症の要因が強い。掌蹠膿疱症では、白癬菌、カンジタ菌が多い。
筆者の臨床体験から、皮膚病の赤みのあるものは大部分結核菌が原因であることが多く、皮膚の状態を診て、結核菌を想定して調べるとほとんどが結核菌で間違いない。急性の顔面、四肢に出る湿疹は大部分食中毒が原因の菌の感染である。発症直前の食事が原因である。
従来鍼灸の不得手とするのが、アトピー皮膚炎で、鍼灸学会会場で、中堅鍼灸師の会話でなかなか治らないという会話を聞いたことがある。あるいは著名鍼灸界指導者の講習で、アトピー皮膚炎の実演を見たことがある。「治療後、3ヶ月も鍼をすればみな治ります」と言っていたが、その場では何の変化が見られない。筆者の刺鍼では刺鍼30秒後、鏡を見せると、改善の変化に驚かない患者はいない。診断の段階で、小腸の右を操作すると右顔面が、左の小腸を操作すると左の顔面が偏して潤いが出る。診断の段階で改善されることを確認して刺鍼するのである。鍼灸界でアトピーが難しいという意味は当然であろう。よくなるかどうか診断の段階で判明できなのであるから、刺鍼後の効果も未知数なのである。
その他、あらゆる疾患に対する的確な診断と治療の詳細を紹介したいのだが、新鍼灸法としての重要な解説がおろそかになるので、機会があれば種々疾患別の詳細な著述をしてみたい。セミナーでも種々公開している。
急性、一過性疾患に対する診断
このような種類の疾患は一般的治療において中心となるもので、患者にとって定期的に受診する慢性疾患以外の初診時の多くの疾患が該当する。
患者はその自覚症状だけが通院の主目的となる。臨床家は、通常の体質、体調を把握したうえで、通院時の症状を分析しなければならない。それが打撲、外傷かそれ以外かに分ける。それ以外ならば、通常の体質以外のことが影響したということを認識する。
その影響したものとは何か?大部分が感染症である。感染源は呼吸器か、消化器である。呼吸器疾患でも、その感染は小腸からの感染が大部分である。つまり風邪の症状があってもその原因は小腸である。つまり原因は食中毒なのである。
様々な症状が発症する。急性腰痛などはその典型である。頭痛、目の痛み、あらゆる症状、疾患の原因となっている。次の多いのは、医療による感染症である。病院に薬を貰いに行って玄関から出たとたんに膝が腫れて歩けなくなった。主人の付き添いで病院に行き帰りは膝が腫れで歩けなくなった例もある。この2例ともMRSAの感染だった。
突発性難聴なども歯科治療からの感染、健康診断での採血からの感染が多く、採血からの感染では非常に多くの患者が発症している。
この点からも従来鍼灸ではなぜ治らないのか、なぜ腫れが引かないのか不問にして、治療していたのだから、治らない疾患が多いのは当然である。鍼灸師は痛み疾患については、これら医療機関の受診があったかどうかの問診をするべきである。
いくつかの例を挙げたが、最も多いのは、食中毒である。夜間から、朝にかけた症状は、前夜の夕食の食中毒である。逆に何も食べなかったときには体は快調なことが多い。TRテストで何の食中毒はその食材の原因を知ることもできる。その診断が外れることはない。

10章 基本的診断法

1.新鍼灸法2大診断法
①高度診断レベルの微細骨折診断、X線微細骨折診断法
②各感染細菌、ウイルス、悪性腫瘍診断法
2.各主要診断法
①望診の仕方
②内臓透視診断
③頭蓋骨、骨盤、脊椎、仙骨、脳、脊髄硬膜、脳硬膜
④全内臓に直接関与す各椎骨27個の椎間板変位

11章全身疾患に対する病因・原因論

以下病因論を列挙したが、ここではブロードマン体部位局在論について説明する。
解剖学での基本理論であるが、鍼灸界、鍼灸臨床家は、その価値を知らな過ぎることを強調したい。膨大な古典理論も一枚のこの脳のこびと図の価値には及ばないのである。
反対側の頭頂葉に描かれた身体部位の障害が反応するポイントが正常になる刺鍼をすればよいのである。実際に見る機会がないとその効果を信じられないだろうが、you tube「新鍼灸法」を視聴されればその効果は一目瞭然である。
1.全身疾患小腸病因論
2.27個の椎間板変位障害論(全脊椎29個中の27個の椎間板、運動器、内臓障害論)
3.律動法理論による、脊椎ディストーション原因論
4.骨格系と大脳皮質、大脳髄質論
5.ブロードマン体部位局在
6. 免疫系、内分泌障害、感染症と胸腺、下垂体論
7.精神疾患と大脳基底核、脳脊髄液(CSF)循環
8.うつ、双極性障害、統合失調性症と蝶形骨
9.脊髄と内臓障害論
10.茂木説全身骨格系と大脳皮質、大脳髄質関連パンターン
11.仙骨披裂論
12.大脳・肺・腎臓・腸の関連変位論(内旋・外旋・後転・前転・捻転)
13.低気圧による脳・内臓拡張論
14.頭蓋・仙骨・脊椎論
15.茂木説同側大脳基底核体部位局在論

12章 鍼灸名人修得法

理論を説き、修得法がない古典理論
1.3章の治す鍼灸の原則に挙げた、治療上の治療家の邪気ない体作りを目指す。
なぜ、能のようなすり足的体の身のこなしが重要なのか?体のエネルギーが調整されても体の移動時の左右の足に重心が移るとき、身体の軸がぶれないようにする。ぶれると一瞬呼吸が乱れ正しい、患者の正しい診断ができなくなるからである。精度の高い診断と、精度の高い刺鍼をするためには、静かな乱れない呼吸が必要である。その体になっているとき患者は治療家の診断上の気を受け入れることができる。
2.患者の体の気を乱さず、一体となる感性と姿勢をつくる
患者の体は、座位でも、伏臥、仰臥でも気の流れがある。その患者の気の流れを遮らない方向性のある立ち方、体の向きを習得する。
3.透視診断を修得する方向性の臨床を心がける(新鍼灸法の目標は、透視診断をする現代の扁鵲の育成、輩出である) 現代医学的鍼灸理論の科学派鍼灸でも、体内組織の診断を現代医療に任せきりにして、自身で体内解剖組織をとらえる訓練抜きでは、常識からして治る鍼灸は不可能である。
4.筆者の臨床見学
臨床見学を勧める。治療に対する真摯さを有するならば、すべての鍼灸師、鍼灸学生を受け入れている。鍼灸師、鍼灸界は治る鍼灸を目の当たりしたことがあるだろうか?その場がどこにあるのだろうか?その時になぜ新鍼灸法が従来鍼灸法を徹底して批判するのかその意味を知ることができるだろう。現代西洋医学が対処することすら想像ができない、実に多くの疾患の病態と原因を知り、多くの疾患を治すことができる意味を知るだろう。再び言おう「鍼は治る、鍼灸臨床家が治らなくした」。

詳細は、拙著「奇跡の新鍼灸と手技治療」を参照ください。