1.日本鍼灸は今、分水嶺に立つ|半身症候鍼灸研究会は技術向上を望む鍼灸師、医師、鍼灸学生の為に新鍼灸セミナー、講習を随時開催しています。

メッセージ

1.日本鍼灸は今、分水嶺に立つ鍼灸師の方へ

日本鍼灸は戦前、独自の古典理論的鍼灸法を確立し、更に科学派の、鍼灸の医学的研究の成果、発展に目覚しいものがあることは周知の通りである。また平成と変わる今日まで新しい中医学の台頭も見られ、確かに日本鍼灸が発展している一面は否めない。

そして、正統医学としての中国での中医学に対して、日本鍼灸も医学的研究の環境が整えられ、病院医療のなかにも浸透しつつある状況が見られる。鍼灸師養成施設も3年制の専門学校から4年制大学昇格の動きが見られると共に、鍼灸大学院までできている。

このように養成施設の変化や病院施設での鍼灸が現代医学的、病院医療方向に発展する現代日本鍼灸に対して、ただ諸手を上げて賞賛するだけで、問題点は皆無なのだろうか。ここですこし振り返ってみたい。

鍼灸師の技量のばらつきが減少し、平均化していくことで国民が安心して鍼灸にかかれる長所がある反面、高度の臨床技術を求める多くの難治疾患患者の期待には果たして応えられているのだろうか?

病院での鍼灸は、一般開業鍼灸院より保険適用で安価で鍼灸にかかれるが、反面、病院の補助的医療の面が強く、鍼灸の主体的医療の性格が希薄になるおそれがある。そして、わたしは現状の病院医療に組み込まれた医学的鍼灸医療の平均が、決して市井の開業鍼灸師のレベルより治療効果を上げているとは思えないのである。

病院医療に組み込まれた方式の鍼灸では、当然、代替・補完医療としての鍼灸に封じられる可能性がある。鍼灸の医学的発展の現実は、このように多くの慢性疾患に無力さを露呈している病院医療のレベルを超えることも難しいだろう。本来鍼灸医療は自由で制約のない発想から未知の可能性が開かれる治療医学だと思うのである。

真の鍼灸は、行き詰まりを見せる病院医療での限界となる疾患に挑戦する、国民からの期待に最もこたえられる新しい医療になりうるのである。

しかし既存の各鍼灸は、理想とする鍼灸法とは大分落差があるといわざるを得ない。鍼灸の効果について臨床鍼灸師の大多数が限界を感じているという声を聞く。鍼灸学校教員の考え方にもそれが見られ、当然、それが鍼灸学生の意識低下に反映されているのではなかろうか?鍼灸学生の鍼灸臨床に対する無気力さは気になるところである。患者も同様に鍼灸に多くを期待していない現実がある。鍼灸が発展していると言われているなかで、この根幹に抱える鍼灸の限界観があるという矛盾が、鍼灸の将来に暗い影を落とすように思えてならない。否、確実に危機が迫っている。

果たして、鍼灸はこれが限界なのだろうか? 代替・補完医療で、がんに対しても治癒させてはいけないのか?疼痛緩和のレベルに甘んじていなくてはならないのだろうか?

従来の鍼灸には、すべて先入観があった。鍼灸はこうあらねばならない!鍼灸はこういう医学である。理論、法則は大切だが、それで充分な効果が上がっていればそれでよいが、しかし鍼灸指導者までが鍼灸の限界を口にする状況の理論が正しいとは思えない。

一度、鍼灸での既存理論に依存せずに自らの感覚で鍼灸臨床に挑戦してみてはいかがだろうか?既存の理論、先人の教えより、もっともっと患者の生体という偉大な教えが正しい治療理論の構築を待っている。先人、古人に検査してもらう寄せ集めの鍼灸理論から、自らの感覚で推理し検証する臨床鍼灸を試みることで、鍼灸効果の偉大さに驚かされるだろう。あらゆる疾患に効果を上げる、真に治す鍼灸家を目指してほしいと思うのである。